消えてゆくことについて [ものがたりとしての写真]
沈む陽に誘われてダムを渡る
胎道に似た記憶のような
やがて色が消える
帰属していた世界もそこからではただ青い
終わってしまった記憶か
歩みを止めた記憶か
嘘を吐く花に会い、
胎道を遡る
青の出口、あるいは入口へ
消えてゆく前に見えたものは
空の十字架
城の街にて [ものがたりとしての写真]
題 「藤に飛ぶ」
題 「涼と煌」
題 「光る雲の下」
題 「亀田家」
題 「ちょっと通りますよ」
題 「老師」
題 「弟子」
題 「老師、怒る」
題 「目が笑わないひと」
題 「牡丹の媚」
題 「時を踏む」
海猫 [ものがたりとしての写真]
題 「海猫の飛ぶ街 小樽」
題 「前ルパン 後ろ銭形」
題 「タミヤ 1/1モデル ウミネコ3型」
題 「すういっと」
題 「着地!」
題 「そして丸まってみた」
題 「Y」
題 「X」
題 「海猫乱舞」
アナタハ何ヲ信ジマスカ [2006年 以降]
日曜日の穏やかな午前、インターフォンが鳴って、片言の日本語の女の子が云う。
「スミマセン・ヨロシイデスカ。」
日曜日の穏やかな午前、たいていは起き抜けかあるいはまだ寝ている僕は、不意をつかれる。
「誰?」
「神カラノ・メッセージ・デス。」
ああ。
ああ。
神様がこの僕にどのようなメッセージを送ってきたのか非常に興味はあったが、僕は素直に正直に彼女に伝える。
「眠いんです。ほっておいてください。」
そして静かに受話器を戻す。幸いなことにインターフォンはもう鳴らなかった。(ゴッド・ブレス・ユー。)
むかし、そういう人たちのひとりと、玄関で無神論について1時間ばかり議論をしたことがある。かみ合わない不毛な議論だった。そのような人たちは数多のサンプル・ケースを持っているので、おおかたの反論には技術的な切り返しを持っているのだ。
それから僕はそのような人たちと議論することはけっしてすまい、と心に決めた。幸いなことに(ゴッド・ブレス・ユー)彼らはそれほどしつこくはない。感情的ではない。ただ救われようとしない僕を哀れんで去ってゆくだけだ。たとえばいささか機嫌の悪い僕が「F●CK」と受話器に呟いて切ったとしても。
彼ら・彼女らにとって、今はちょっとしたチャンスなのかもしれない。神様に救われようとする人たちの心の声が聞こえるのかもしれない。いつもより神様のメッセージに耳を傾ける人たちが増えていると考えているのかもしれない。
議論はやめた僕だけど、それでもさっきの彼女が天罰とか警告とか、そのような意味のことを最初に云ったら、面倒なことになったかもしれないな、とぼんやりと思う。
神様のメッセージ。直接、云いに来てくれたらいいのに。
でも僕は神様に会ったら絶対に一発ケリを入れてやる、と決めているので、結局は聞けないかもしれないけれど。ゴッド・ブレス・ユー。
目を閉じない・耳を塞がない・俯かない [2006年 以降]
僕はできる限り耳目を開き、知ろうとすることにした。
そして記憶する。
目の前の情報の確度を調べ、記憶してゆく。
何が(あるいは誰が)僕らと敵対するものなのか。
はからずも、いま身近な人たちの、いつもより暴露した心根を見て、
ナチュラルに選別しているように。
弱い僕よりももっと弱くて、
目を閉じ耳を塞ぎ俯いてしまった愛すべき人たちのためにも。
僕は記憶する。
僕に今できることのそれがすべて。